最終更新日:2018年10月7日
相続が開始されると被相続人の財産は法定相続人のものになりますが、法定相続人が複数いる場合には各相続人が相続財産を共有することになります。
この共有状態を解消し、相続財産を各相続人に具体的にどう分けるのかを決める話合いを「遺産分割協議」といい、その内容を記したものを「遺産分割協議書」といいます。
相続手続きにおいては基本的に遺産分割協議書が必要になりますが、以下の場合には前述した理由から遺産分割協議書を作成する必要はありません。つまり、遺産分割協議書がなくても相続手続きを進めることができます。
なお、各相続人が取得する財産の総額が法定相続分であっても、各財産毎の分割割合が異なる場合は遺産分割協議書が必要になります。また、遺言がある場合でも、その内容次第では遺産分割協議書が必要になることがあります(※1)。
【遺産分割協議書が必要な場合・不要な場合一覧表】
必要 |
遺言 あり |
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遺言 なし |
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不要 |
遺言 あり |
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遺言 なし |
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その他 |
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遺産分割協議が有効に成立するためには、共同相続人全員の参加と合意が必要となり、一部の相続人を除外してされた遺産分割協議は原則として無効となります。
また、そのような瑕疵のある遺産分割協議書ではそもそも相続手続きを行うことはできませんので、もし相続人の確定を誤ってしまった場合や、一部の相続人を除外してなされた場合はやり直し・作り直しになってしまいます。
そのため、まずは戸籍等を取得して正確に相続人を確定させる必要があります。相続人を確定するために必要になる戸籍の範囲や相続順位について詳しくは「相続手続きに戸籍が必要な理由」をご覧ください。
なお、相続人に「未成年者」「認知症等で意思能力や判断能力がない者」「行方不明者」がいる場合は、遺産分割協議を行う前に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
相続財産 | 参考資料 |
土地 |
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建物・構築物 |
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現金・預貯金等 |
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有価証券 |
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動産 (自動車・書画骨董品・宝石等) |
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生命保険金等(※1) |
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債務 (借入金・未払金・保証債務(※2)) |
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その他 (貸付金・未収金等) |
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相続人の調査・相続財産の調査後、共同相続人の間で遺産の分け方について話し合いをし、合意ができたら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議の方式については、民法上で特別の様式が定められているわけではありませんので、必ずしも共同相続人全員が一堂に会して協議する必要はなく、電話や手紙などで話し合いを進めたり、一人が原案を作成して持ち回り、全員の承諾を得る方法でも問題ありません。
また、遺産分割協議証明書や相続人譲渡証明書などを利用して手続きすることも可能です。
なお、遺産分割協議は共同相続人全員の口頭による合意でも有効に成立しますが、様々な相続手続きで遺産分割協議の成立を証する書面を要求されますし、相続人間での遺産分割協議の蒸し返しを防ぐためにも書面で作成するべきです。
①被相続人の情報を表示する
被相続人の表示として、氏名、生年月日、死亡年月日のほか、死亡時の本籍、死亡時の住所(最後の住所)も記載するようにしましょう。
②「誰が」「なにを」「どのくらい」取得するのかを具体的に明記する
取得する遺産を特定することができるように詳細に記載します。
不動産の部分については、登記事項証明書などを見ながらそのまま記載します。預貯金等についてはいくつか注意する部分がありますので、詳しくは「預貯金口座の凍結解除手続き」をご覧ください。
なお、特定の相続人が全財産を取得する場合は、個々の財産を特定・列挙する必要はなく、「すべての財産」という文言だけを記載すれば問題ありません。
③住所・氏名は公的な証明書のとおりに記載する
住所・氏名の記載は、住民票や印鑑登録証明書に記載されているとおりにそのまま記載します。なお、住所・氏名は印字であっても問題ありません。
④各相続人は実印で捺印する
実印を使用するのは、印鑑登録証明書と一体になって、合意が本人の意思に基づくものであることの証明となると同時に、相続登記申請(土地・建物の名義変更手続き)や預貯金等の相続手続きの際に印鑑登録証明書を添付しなければならないためです。
なお、遺産分割協議書が複数枚になった場合は、各用紙の間に相続人全員の契印も忘れずに押印します。
すべての相続財産についての協議がまとまらない場合、財産毎に遺産分割協議書を作成することも可能です。一部の財産についてだけ遺産分割協議を行い、残りの財産については後日に協議するといった方法です。このような遺産分割協議書を作成する場合には、以下のことを記載しておきましょう。